ふそうファイター 増トン 6M60 H28年式
≪症状≫
・DPF異常チェックランプ点灯
・エンジン出力低下(通常走行困難)
・DPF手動再生不能
≪診断・処置≫
・DPFすす堆積量過多により出力制限、再生不能
・診断機による故障診断、マフラー洗浄
※画像のトラックは参考です。
ドライバーさんからの情報ですと、高速道路を走行中に「手動再生」の要求が出たが、昨今非常に厳しくなった『拘束時間』を考慮して数十キロ先のサービスエリアで停車して休憩を兼ねてDPF再生をしようと考えたようです。
しかし、走行を続けて10分くらい経った辺りでエンジンチェックランプが点灯。
その後も走行を続けたが、次第にエンジン出力が低下。平たん路でもパワーが弱く、緩い坂道になるとアクセルベタ踏みでも速度が40~50キロに低下。
なんとか予定していたSAに到着。
手動再生をしようとスイッチを押すが燃焼が始まらず、エンジンを再始動させたり何度も試みるが何も出来なくなっていた。
会社管理者さんから「ふそうSOS」へ出動依頼。
ふそうの外注メカニックが到着し点検するが「現地では何もできない」との判断・・・(ホントは応急措置可能なんだけどね(-_-メ))
※この一件は過去ブログに書いています(-"-)
頑張って愛知まで帰って来て荷卸しを完了。
その後点検・修理となるのだが、SOSでいい加減な対応をされ怒ってる管理者さんはふそうへは入庫させず当社が作業することになりました。
状況説明が長くなりましたが、ここからが作業内容です。
(診断時の画像を撮り忘れてしまいました・・・)
マフラーの状態はMAXとなっており、手動での再生は不可。
DPF関連の故障や修理には、ディーラーさんや当社が持っているような「診断機(スキャンツール)」が必要となります。
また知識のない方が何らかの手段でやみくもに「強制再生」を実施したりすると、DPFマフラーが溶損してしまったり、最悪の場合マフラーが発火する可能性もありますので絶対にやめてくださいね!
このトラックは尿素SCRシステム付きですので、DPFマフラーの後方(位置的には横ですが)にSCRマフラーが付いています。
排気ガスの流れで簡単に説明すると、エンジンから出た排気ガスがまず「DPFマフラー」を通ってすすを捕集し『物理的』にPM(粒子状物質)を取り除きます。
その後「SCRマフラー」で尿素水(アドブルー)によって『化学的』にNOx(窒素酸化物)を浄化します。
DPFマフラーは非常に目の細かいセラミックフィルターで、排気ガスに含まれる粒子状の物質をろ過して捕集した物を「すす」と言います。すすがある程度堆積すると、それを燃やして除去するのですが、全てを完全に無くすことは出来ず、今回のように溜まってしまって『糞詰まり』状態になってしまうんですね。
(今回は「アッシュ」のつまりではありません)
詳しく知りたい方はググってくださいね!(;'∀')
ここからは車体の奥から撮影したので画像の向きが逆になります。
今回はDPFマフラーの洗浄ですのでSCRマフラーは一切触りません。
また、DPFマフラーの「後段」も洗浄には関係ないので触りません。
取り外すのは「前段」と「中段(セラミックフィルター)」です。
画像の文字が小さくて見づらいのですが、排気温センサーや差圧パイプのゴムホースなどを取り外します。(洗浄だけの場合、パイプは外さず洗浄作業します)
なお、熱で固着していることがあり、無理やり取り外そうとすると破損させてしまいますので注意が必要です。
特に、前段~中段~後段のマフラー同士を固定しているボルト・ナットはかなり固いと思いますので、ナメたりしないように慎重に取り外してください。(ナメてしまうと、場所が狭いのでガスやグラインダーでの取り外しは非常に困難です!)
全ての付属品やステー(枠)などを取り除いたら、前段の前側のボルト・ナットを1本だけ残して取り除きます。
中段と後段を固定しているボルト・ナットも1本だけ残して取り除き、いよいよマフラーを降ろしますが、車体からマフラーを取り外す際は、前段と中段を同時に外しますので9本のボルトナットは付けたままにしておきます。(地上で分解します)
このサイズのマフラーはさほど重くないので、標準的な男性ならジャッキなどを使わずに人力で楽に降ろせます。(かと言って油断しているとケガをしますので注意してくださいネ!)
降ろしたマフラーです。
中段(セラミックフィルター)の後方側は新品のように綺麗ですね。
物理的に綺麗になった側なので、セラミックが溶解していたり欠けたりしていなければ後方側はこのように綺麗な状態です。
前段です。
前段の前側(排気ガスが入る側)からの画像です。
真っ黒ですねぇ!
問題のセラミックフィルターの前側です。
燃やしきれなかったすすが溜まっていますね。
画像で格子状に見えている小さい穴ですが、この奥は行き止まりになっている構造で(詳しくはググってください!)、その中にもすすが溜まっています。
まずこのフィルターをエアーで清掃します。
※かなりのすすが吹き出しますので、周囲を考慮して行ってください。
差圧パイプ内のつまりも確認しておきましょう!
パイプがつまっているだけの場合もありますので注意して確認が必要です。
なお、清掃のエアーも洗浄の水も、必ず『出口側』(綺麗な側)から行います。間違っても汚れた側からエアーを吹き付けたり水を掛けないこと。
そうしないとすすが目詰まりしてしまい、洗浄どころか逆に詰まらせてしまいます。
書き忘れてましたが、ここから先の画像がありません・・・
当初、作業には十分に時間をいただいていたのですが、ちょうどこの頃に「夕方から使いたいので早めに終わらせてほしい」と・・・
写真を撮っている余裕がなくなってしまいましたm(__)m
エアーである程度すすを飛ばしたら、通水して洗浄します。
通常の汚れでしたら、水だけで大丈夫です。
洗浄剤や溶剤などを使用した場合、完全にそれらを流し落とさないと再生時にセラミックを溶損させたり火災になることがあります!
洗浄が済んだらエアーで水を飛ばしたり放置して水気を無くします。(私は完全に乾いてなくても組み付けちゃいますが)
取り付けは外した時の逆です(^▽^)/
次回の整備時に苦労しないため、ボルトナットにはかじり防止剤を塗って規定トルクで締め付けます。
ボルトの数が多いので、最終締め付けの際にマーキングしておき、締め忘れのないよう注意が必要です。
組み付けが終わったら各部を最終点検します。
(これが非常に重要なポイントです! 特に急いで作業を済ませた場合、最終点検を怠ると情けないくらいの凡ミスを発生させるもんです・・・)
洗浄後は診断機で「強制再生」を実施し、温度などを監視しながら再生させます。
※トラックでの再生操作は出来ないので、必ず診断機が必要となります。
※DPFやECUなどにエラーのメモリがある場合はそれを消去しないと強制再生へ進めません。
強制再生時、マフラーパイプから白煙が出ますが、これは水蒸気なので問題ありません。
強制再生が終わったら診断機でダイアグを消去し、可能ならば付近をグルっと試運転を実施し、再び診断をかけます。
問題がなければ作業終了です!
当社では出張でのDPF洗浄作業も行っていますが、上記の通り、かなりのすすが舞い上がりますし水道水も必要です。
また、このブログをお読みになって「自分でやってみよう!」と思われた方は十分に注意して自己責任で行ってくださいね!
新品のマフラーは数十万円! このトラックの場合、合計すると100万円もします!
取り外しや取り付け時に落下させたり、洗浄の際に高圧洗浄機などで損傷させてしまったら・・・
気を付けて行いましょう(;´Д`)
ひらまつ (土曜日, 13 6月 2020 00:09)
参考になりました。
違う車種の記事も期待しています!
GKS (日曜日, 06 10月 2019 18:44)
TANI YU 様
コメントありがとうございます。
排気温度が上がらないんですか。
排気シャッターは閉じてますか? 固着や作動不良でシャッターが閉じておらず温度が上昇しないトラブルが多くありますね。
差圧がそれだけしかないなら詰まりはなさそうですね(^。^)
メーカー基準値とはDP差圧の基準値ですか?
正直なところ、私も車種ごとの詳しいメーカー基準値は知りません…σ(^_^;)
お力になれずスミマセン…
TANI YU (日曜日, 06 10月 2019 17:54)
はじめまして。参考になりました。
質問があります・・ 洗浄後にDPF強制再生をしましたが、排気温度が200度程度しか上がりません
差圧は0.11kPaでがなぜでしょう?
それと、メーカーの基準値はどのように調べたらわかりますか?
ご指導のほどよろしくお願いいたします。
GKS (木曜日, 15 11月 2018 19:08)
コメントありがとうございました。
もっとアップ出来るように頑張ります!
DAISYO (木曜日, 01 11月 2018 20:47)
わかりやすかったです!